九高の四季

九高の四季

2014年3月の記事

  • 2014年03月20日ブログの噺

    「新クラス発表」

     本日、平成25年度第3学期の終業式です。今回で今年度の噺はラストです。

     新学期になると、新2年生、新3年生では、「新クラス発表」すなわち「クラス替え」が実施されます。デザイン科はクラスメンバーの新たなシャッフルとなりますが、普通科に関すれば、文系理系の選択や進路希望に応じて新クラスが編成されることになります。

     もう10年以上前のことですが、本校に女子クラスが存在し、担任をしたことがあります。女子ばかり48名のクラスで、今だったら「AKBみたいで華やかだなあ・・・」などと、おだてるようなコメントも言えるのですが、当時はまだまだそのようなアイドルグループは、デビューするはるか昔のことでした。もっとも、「AKB48」と初めて聞いた時、「旧ソ連製の小銃AK47と女の子のグループにどんな関係があるんだ・・・?」と、的外れなことを思い浮かべるような担任だったのです。

     このクラスが2年次から3年次に進級する際、やはり「クラス替え」が行われました。女子クラスから男女混合クラスの間での新クラス編成だったので、場合によっては「生活環境」がガラリと変わるため、生徒達の関心度は異常に高いものでした。

     新学年の新学期の始業式の日、「新クラス発表」となります。ところが、担任として、その数日前から、大きな不安が鉛の固まりのように胸に重く沈んでいました。「もし、朝のSHRで新クラスの発表をしたならば、きっとパニックが起こり大変なことになるぞ・・・」。象用のバファリンを飲み下しても解消されないくらいの、頭痛のタネが頭に蒔かれて、芽を出してツルが伸び、まるで「ジャックと豆の木」状態でした。

     「○×ちゃんと同じクラスになったあ!」「やったあ!」「いやーっ。また女子クラス?」「わーっ、信じられなーい!!」

     黙っていると、想定される「賛否両論」の叫び声が、耳の中で響きます。

     「やっぱり、こうするしかないだろうなあ・・・」

     悩みに悩んだ末、SHRが始まる1時間前くらいに教室に行って、そっと黒板の真ん中に名列表をはっておくことにしました。「新クラス発表」にともなう、喧騒が静まるのを待ち、いわゆる「ガス抜き」をするためです。

     それでも、恐る恐るSHRに行ったら、「ふーん、そういうことだったのね・・・。やっぱりそうか・・・」というニュアンスを含んだ、あまり爽やかではない雰囲気が教室に漂っていました。何人かの女子生徒が何か言いたげな様子で、こちらをチラッと見ながら腕組みをしている姿がとても恐ろしく、彼女達が卒業した後でも、時々、悪夢の中で思い出しては、うなされたものでした。

     現在、在校生の「新クラス発表」は、始業式の朝、体育館前に立て看板を出して行われています。そのおかげで、教室内の喧騒が一転して、春風が流れるキャンパスに爽やかに響き渡ることになったのです。

     それでは、在校生諸君は、お楽しみに。

  • 2014年03月13日ブログの噺

    「常連」

     今年度の噺も、残り2回となりました。

      昼休みに英単語の再テストを行うために、2年前に新築された教室棟にある学習室で、生徒を待っていました。本校には、選択科目のクラス分割授業や少人数指導のため、25名程度を定員とする、「学習室」と称される小教室があるのです。

     約束の時間になると、再テスト受験のため、一団の男子生徒がやって来ました。彼らは、ほとんど「常連」とも呼べるグループを形成しています。生徒の一人が言いました。

     「大将、ここ開いている?」。明るくヒョウキンな声で、一人の生徒が声をかけます。本日、英単語再テスト「常連」の皆さんは、「サラリーマンの集団が居酒屋に立ち寄るモード」で集合しています。彼らは普段から、教室で高校生のコントっぽい雰囲気を漂わせていますが、本日はここで、「実践演習」に取り組むつもりのようです。

     そこで、生徒に話を合わせることにしました。テレビのバラエティ番組でも、出演者には、「ネタ」よりも当意即妙の「トーク力」が求められる時代です。アドリブでの対応が、現代の教育現場でも必要なのでしょう。

     「へい、いらっしゃい!」「えーと、何をもらおうかな?大将、何か、『今日のおススメ』ある?」「いつもどおり、浜男で採れた英単語の新鮮なのが入っていますけど」「うーん。そうね、じゃあそれと、とりあえず・・・・英単テストを1枚ずつ!」「ナマでいいですか?」「大至急でお願いね」「へいっ!かしこまりました」。ちなみに「浜男」とは、学校所在地の旧地名です。

     ここまで付き合ってやってから、テスト用紙を配って、英単再テストが始まりました。

     その後は何事もない、いつもどおりの英単語の再テストです。「カリカリ」というシャープペンシルの音だけが、小教室に響き渡ります。

     ところがしばらくすると、メンバーに予定されていた一人の生徒が、遅れてバタバタと駆け込んでやって来ました。

     「すみません。忘れていました」「急げよ。テストはもう始まっているからね」「つい、うっかりしてしまって」「それは仕方ないな。分かったよ。遅れてきたから、駆けつけ3杯」「・・・何ですか、それ?」「いや。いらんこと言ったなあ・・・」

     気づかない内に、生徒に振られた「ネタ」を引きずっていたのです。

  • 2014年03月06日ブログの噺

    「臥薪嘗胆」

     卒業式の日、体育館フロアーで保護者の受付をしました。卒業生の各クラスの生徒名表に、保護者が受付を済ませたら○を付け、「おめでとうございます」と心を込めて言いながら、式次第のプリントと学校新聞を手渡しする仕事です。

     10時からの卒業式開始ですが、受付は8時40分くらいから開始しました。前日とはうって変わって、花冷えのする中、受付業務を行いました。使い捨てカイロを背中に貼っている先生もいます。

     受付はクラス毎に設けられているのですが、なかなか保護者がやって来ないと不思議なことに、「これは、自分が悪いせいではないか・・・」と、鬼界ヶ島に一人取り残された俊寛のような不安な気持ちになります。「何がいけないのかな・・・。なかなか保護者が来ないのは・・・」。絶望で泣きそうな気持ちになりかけていると、一人目のお母さんが受付を済ませ、その瞬間安堵しました。「あーあ、やっと初日が出た」。番付が落ちかけているお相撲さんのような心境です。

     こんな気持ちになるのには理由があります。隣のクラスの受付をしているのが、若手の男性の先生で、しかも俗にいう「イケメン」なのです。しかしそのせいか、「受付」がきわめて順調に進んでいるように思われます。「お母さんならば、絶対にそっちで受付をしたいと考えても不思議はないよなあ・・・」。ひがみが、胸に込み上げて来ます。

     しかも、そのクラスの保護者には、担任の女性の先生から心遣いとして、一輪挿しの可憐な花が準備されています。受付をする度に、「このお花は○×先生から、お渡しするようにお預かりしたものです」と、若い男性の先生から甘い声で優しいコメントが添えられ、お母さんは思わずニッコリ。「オッサン受付」との格差が広がるばかりです。「こんなことなら、せめて消費者金融のCMがついたテイッシュでも配ればよかったな・・・」

     式開始まで30分前くらいになると、急に受付をする保護者が増えてきました。その時、理不尽なことですが、隣の「若い・イケメン・一輪挿し」アドバンテージ3点セットの受付の先生の前に、お母さん達の行列ができました。

     土曜日の卒業式のため、夫婦でご出席された保護者が多いようでしたが、隣のクラスに女性の行列ができていることに、内心心穏やかではありません。

     「ボクのところは、奥さんから『あんた、受付してよ』と促されたお父さんが、しぶしぶ並ぶ場合が多い気がするなあ・・・」。あまり根拠のない憶測をもとにしたジェラシーが、シェークスピアの「オセロ」のように、胸の中で渦巻きます。

     「如実な格差」を目の当たりにして、反対側の隣で受付をしている男性の先生も、同様の嫉妬を覚えたようでした。

     「あんなに列ができるならば、恥をかかせるために、受付をする際の服装でウソを教えておけばよかったですね・・・」。「行列のできる受付の先生」は、新人なのです。「忠臣蔵」の浅野内匠頭(あさのたくみのかみ))を苦境に追い込んだストラテジーが頭に浮かびました。「そうだね。『ウチの学校では、卒業式の受付は山笠の締め込み姿でする』とか教えたらよかったかな」「でもですね、そのためにもっとキャッーとか騒がれたら、逆効果ですよね」「それもイヤだな。じゃあ、メキシコプロレスのマスクを被らせればよかったか・・・」。「吉良上野介風いじわる作戦」を検討しつつも、まったく不毛の会話でした。

     式開始の10分前を切ると、受付のために並ぶ保護者の数がどんどん増えてきて、私の前にも行列ができました。

     「桃李もの言わざれども 下自ずから蹊をなす」。高校の時、漢文の時間に覚えたフレーズが頭を過ぎりました。「こんな時、つい教養が心から溢れ出てしまうな・・・」。無理やり「自己肯定的」なことを考えないと、精神の安定が取れないくらい動揺しているようです。

     「すみません。○組はこちらでよろしいんでしょうか」。ふと、キレイな女性の声が、隣の受付にたずねるのが聞こえました。「あっ、そのクラスはこちらです」と言いかけて、さらにひがみました。「明らかに担当はこっちなのに、やっぱり、向こうの列で受付をしたいという気持ちになるのか・・・」。あまりの「格差」の広がりに、アドレナリンが駆け巡り、体内で暴動が起こりそうになりました。

     卒業式の受付はそんな思惑とはまったく関係なく「粛々と」進んでいます。冷え込んだ体育館フロアーの片隅で、「来年こそはきっと」という、再び漢文の時間に覚えた「臥薪嘗胆」的な気持ちをムダに熱く燃やしました。・・・ついでに体脂肪が燃えればいいのですが。

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