九高の四季

九高の四季

2014年6月の記事

  • 2014年06月19日ブログの噺

    「スモール ワールド」

     昨年、私の家の隣の空き地に新築の家が建って、そこに日本人のご主人と外国人の奥さんが住み始めて、田舎の町内は騒がしくなりました。ペリーの黒船が来航したように、突如として我が「ホームタウン」に「グローバル化」の波が押し寄せてきたのです。

     「あの奥さんは、どこの国の人だろうか?」「アメリカ人?」「ドイツ人だって」「オランダの人って聞いたよ」「小学生くらいの息子さんは、博多弁をしゃべるみたいですよ」「でも、ママとは外国語で話しているね」

     奥さんが、いわゆる「欧米人」であることは一目でわかるのですが、母国語でなくかなり上手な日本語を話すので、なかなかどこの国の人なのか分からないようでした。

     「もっとも外国語を聞いても、何語か分からんかもしれんけどなあ」「おそらく中国語やスワヒリ語でないことは、判断できますよ」「そうかなあ。英語でも、英語って分からないと、英語だと分からないですよ」「佐賀弁と鹿児島弁なら区別がつくけどね」

     町の片隅で交わされた、大変のん気なやり取りです。

     ところが、事態は急展開を見せました。ついに奥さんが、「フランス人」であることが判明したのです。

     「どうしてフランス人って分かったのですか?」「日本語にフランス語なまりが感じられたから・・・らしいですよ」「フランス語なまりってよく分かりましたね」「ええ、奥さんが自分でフランス人だって言ったので」「・・・・・・!」

     さらに、奥さんについて「△女子大で、フランス語を教えているらしい」という追加情報がありました。しかし、ここでこの話は一度終わり、人々は騒ぎのことをさっぱり忘れ、田舎の町に平穏な日々が戻ってきました。

     ところがある日偶然、今春大学を出たばかりの本校の新任の先生の一人が、△女子大で出身であることを知って、細い縁の糸をたぐるように、勇気を出してたずねてみました。

     「えーと。若い女性の先生と話しかけたいという気持ちで聞くわけではありませんが、先生の出身大学に、もしかしてマリー・アントワネット(仮名)っていう名の、フランス人の女性の先生はいませんでしたか?」「いらっしゃいました」「もしかしたらその先生から、フランス語を習っていたとか?」「はい。習っていたどころか、とても懇意にさせて頂いて、今年の春、先生の新築の家に遊びに行ったことがあります」「えぇっ!」

     その証拠として、スマホに中の写真を見せてもらいました。

     「あっ!本当だ!!息子さんと生まれたばかりの赤ちゃんの写真もある!」

     何と、私の知らないうちに新任の先生は、私の家の隣の家で、何の「許可」を得ることもなく(!)、「日仏友好」の時間を過ごしていたのです。

     あまりにも完璧は「隠密行動」の事実に動揺してうつろな視線を宙に舞わせていると、まったく何の脈絡もないのですが、ふとこんなことが頭をよぎりました。

     「そういえば、ボクの家の前の公園で、まったく何の許可を取ることもなく、高校生の時、その当時の彼女と夜遅くまで語り合っていた若手の先生がいた気がするなあ・・・」

     古い話であり理不尽なこじつけですが、思い出してしまったことは仕方ありません。私の知らないうちに、本校の複数の先生が、私の家の周辺で「勝手なふるまい」をしていた事実に深い衝撃を受けました。・・・こう書くのも、かなり「勝手なふるまい」ですが。

     「灯台下暗しというか、まったく、油断がならないなあ。・・・What a small world!・・・」

     

    来週は、期末考査中のため、「ブログの噺」はお休みします。

  • 2014年06月12日ブログの噺

    「色紙と輝き」

     文化祭の余韻が、夏風邪による微熱のようにまだまだ学内に残っていますが、生徒には徐々に落ち着きを取りもどさせ、月末に予定されている「期末考査モード」に向けて、授業の雰囲気をシフトチェンジしなければなりません。

     「行事の雰囲気を盛り上げるだけ盛り上げて、急に落ち着かせるのは大変だな・・・」

     野球にたとえれば、勝利目前のピッチャーがリードで迎えた9回裏、フォアボールを相手に3つ与え、「ノーアウト満塁一打逆転」の緊迫した場面で観客を大いに沸かせた後、そこから何とか頑張ってスコアをゼロに抑えるようなものです。間違っても、「デッドボール」等で「押し出し」にして、ゲームを「台無し」にするわけにはいきません。

     文化祭から数日経った現在、思いのほか生徒の態度は落ち着いています。「形状記憶合金」のような復元力が、生徒に徐々に身に付いているとしたら、それはとても素晴らしいことです。これも「伝統の力」といえるのかもしれません。

     「学校行事」のすばらしいところは、普段見られないような生徒の一面を「再発見」「再認識」できることです。教室外の「非日常」の中で見せる、生き生きとした姿や眩しい笑顔に、思わず目を奪われることが多いのです。

     笑顔といえば、文化祭当日、偶然会った顔見知りの女子生徒が、「憧れの先生」の色紙を手に入れることができたらしく、喜びを抑え切れない様子で報告してくれました。

     「先生、これ、○×先生の色紙です。やっと手に入れました!ウレシイ!!」「それはよかったね」

     本校の文化祭では、先生たちに事前に色紙を書いてもらって展示し、その後、チャリティーの一環としてオークション販売するのが恒例となっています。「落札」して、その生徒はよほど幸せだったのでしょう。止めどない感情のほとばしりのため、声が弾んで、教室の天井まで届きそうなくらいでした。

     その一方、文化祭前の職員室で、「色紙」についてあまり幸せとはいえない、こんな弱気な発言が聞かれました。

     「自分の色紙だけ売れ残ったらイヤだから、最初から100円を色紙に貼っておこう」「そうですね。ボクの色紙なんて、きっと『魔除け』くらいにしかならないから、生徒は絶対に買わないだろうなあ・・・」

     ところで「私事」ですが、そんな先生たちの声を聞いて、ふともっと重要なことに気づき愕然としました。

     (しまった!いろいろバタバタしていて、今年は色紙を書くのを忘れていた・・・(!))

     「忘れていたことすら忘れていた」という事実が、温めた食品を翌日電子レンジ内に「発見」した時のように、胸にかなり大きなショックをもたらしました。

     さて、「高齢者(あくまでも生徒の年齢を基準にして)」の反省はともかく、数多くの様々な生徒の、輝く笑顔を見ることができたことは収穫でした。授業中、迫り来る眠気のせいで、寝不足の白ウサギやノルウェー産の塩サバのように、赤くドロンとよどむこともある生徒の目がキラキラと輝いて、昭和の少女マンガのヒロインのように星や花びらが瞳に浮かんでいました。まさに文化祭のテーマ「輝(かがやき)」に相応しい一日でした。

  • 2014年06月05日ブログの噺

    「エスニックフード」

     いよいよ明日から文化祭です。1日目は「学内発表」ということで、本校の生徒だけが参加・見学する行事となります。特にイベントに「企業秘密」が隠されているわけではないのですが、初日は2日目の「リハーサル」もありますので、そっとしておいて下さい。ただし、もしのぞかれたとしても、「鶴の恩返し」のような驚愕の事実が飛び出すことはありません。むろん、「私は月に帰ります」などという、緊急重大発表もありません。

     文化祭の2日目は「一般公開日」として、保護者の皆様や一般のお客様をお迎えし、文化部による様々な展示や発表、イベントに加えて、1年生が「合唱コンクール(決勝)」、2年生が「クラス展示」、さらに3年生は「チャリティーバザー」を行います。

     「バザー」といえば、「焼き鳥」「ホットドッグ」「焼きそば」など、文化祭の定番である「日本食品」に加えて、「国際色」あるものとして、ベトナムの「フォー」というライスヌードルを提供するところがあります。

     そこで、バザーを担当する生徒にインタビューしてみました。

     「どうして、バザーの食品として、『ベトナム料理』を出すことになったのですか?」「関連学園の日本語学校に、最近、ベトナムからの留学生が増えていると聞いて、『彼らと協力して、エスニックフードのバザーをしたらどうだろう』と考えました。そこで、もっともポピュラーなベトナム料理として、フォーを作ることになったのです」「食材のフォーは、どうしたんですか」「輸入食品専門店に注文して、1袋400グラム入りのフォーを30袋、1ケース取り寄せてもらいました」「入荷するのに、時間がかかりましたか?」「思ったより簡単に入手できました。ところが、入荷したフォーを、家から学校までJRを利用して運ぶのに苦労しました。紙袋に入れて1日8袋ずつ運搬したので、4日間かかりました」「それは大変でしたね」「毎日同じ時刻のJRで運んで、乗務員さんから怪しまれるといけないと考え、一日おきに乗る列車をかえたりもしました。今、先生のロッカーにフォーを保管してもらっていますが、赤いパッケージのフォーがぎっしり詰め込まれているのを見ると、あやしい密輸業者になったような気分です」

     文化祭本番の一週間くらい前に、実際に家庭科教室で試作してみたそうです。

     「うまくいきましたか?」「チキンで出汁を取り、野菜を加えてスープを作り、ゆでたフォーを入れて試食したら、思ったよりもいい感じに仕上がりました。味付けには、ベトナム料理らしさを加えるため、本場にナムプラーっていう魚で作った醤油とパクチーという香草を使っています」

     文化祭当日は、調理は主に生徒が担当し、「本場の国からの留学生」が販売を手伝ってくれることになっているそうです。生徒が期待に胸を膨らませながらも、少し不安げな表情で、こう付け加えました。

     「日本人のお客さんはともかく、私達がつくるフォーについて、ベトナム人の留学生がどんな感想を持つのか、楽しみのような恐いような複雑な気持ちです。材料は本物なんですけれど、レシピーはインターネットで調べただけなので」

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