九高の四季

九高の四季

2015年6月の記事

  • 2015年06月18日ブログの噺

    「バランスが大事」

     以前男子ばかりのクラスのことを書いたことがありますが、先日、そのクラスでこんな問いかけがありました。

     「先生。ユメタンって女の子の名前みたいじゃないですか?」「・・・・・・?」

     これには少々解説が必要です。現在、授業で「ユメタン」という書名の英単語集を使っているのですが、通常、この本はユメ・タンというアクセントで呼ばれています。ところがこれを・メタンと、最初の字にアクセントを置くと、女の子の名前のように聞こえることに気づいた生徒が、こんな質問をしたようです。

     「まあ、そうだけどねえ・・・」「そうでしょう?」

     職員室に戻って考えました。

     「男子生徒の集団の中にずっといると、ついそんなことを考えてしまうのかなあ」

     そういえば、昼休みに校内巡視で教室の様子を見に行くと、「男クラ」の生徒たちが、「共学」クラスの教室周辺の廊下をウロウロしている姿が見られます。

     「こらっ、何でここにいるんだい?」「別にいいじゃないですか」「まあ、悪いことはないけどね」「でしょ?」

     確かに、男子生徒をその場から追い払う、「法的根拠」はありませんでした。

     その一方、デザイン科は女子生徒が圧倒的に多く「女子クラス」が編成されることもあり、「男女クラス」にしても男子が少なく、男子生徒は、宝塚歌劇団に迷い込んだ修学旅行生のような雰囲気をかもし出しています。

     あるクラスの「人口比率」を例にあげれば、女子が30名以上に対して、男子が10名です。

     このクラスでは学期当初、出席番号順の座席のため、男子生徒がかたまって座る状態でしたが、最近席替えをしたので、女子の間に男子が点在するようになりました。

     「このままでは、南シナ海の岩礁のように周囲を埋め立てられて、人工島の上に滑走路が作られてしまうぞ・・・」

     なぜか密かに「危機感」を覚えたので、男子にこう話しかけました。

     「とにかく、10人の男子はしっかり結束して、一人も欠けることない団結力を高めろよ」「でもですね・・・」

     何となく女子生徒の雰囲気に圧倒されて、言いたいことが言えないような様子です。

     「そんな弱気じゃダメだよ。勇気を振り絞って、毎日堂々と暮らすことができるように、これから君達を『十勇士』と呼ぼう!」「ジュウユウシですか?」「うーん・・・」

     あまり、乗り気ではない様子でした。

     ところが、そんな「十勇士」のクラスが、文化祭の合唱コンクールで優勝しました。女子がソプラノとアルトに分かれ、男子の低音のパートとのバランスが絶妙な、素晴らしいハーモニーが披露されたのです。

     「十勇士、やったじゃないか!」「やりました!!」「芸能部門で結果を出したから、『デザイン科ジャニーズ』と呼んでもいいよ」「うーん。それも今ひとつですねえ・・・」「クラスの『AKB』に囲まれて、頑張ったじゃないか」「うーん。それはそうですけどねえ」

     ちょっと間をおいて、男子生徒の一人がポツリと言いました。

     「やっぱり、何ごともバランスが大事ですねえ・・・」

     

    *来週は期末考査期間中につき、「噺」はお休みです。

  • 2015年06月11日ブログの噺

    「アジアの復活」

     チャリティーのため行っている文化祭の食品バザーは、例年3年生のクラスが担当していて、今年も各クラスの創意工夫が見られ、大変活況を呈しました。

     さらに今年は、サプライズ企画として、3年生の先生たちによる出店がありました。  

     あらかじめ家庭科室で調理されたご飯ものをきちんとパックに詰め、学年を担当する先生の似顔絵をラベルとして貼りつけ、木製のスプーンまで添えた、なかなか用意周到な一品です。それを、これまた手慣れた学年主任を中心とする「販売員」が次々と売りさばき、チャリティーに大いに貢献しました。  

     「やっぱり大人のやることは違うなあ・・・」

     成人して何十年も経ちました。一度にたくさんの注文を配達しようとする昔のソバ屋さんの出前のように、やたらと重ね過ぎた年齢のせいでしょう。最近むしろ、石狩川をさかのぼる鮭のごとく「初心」に回帰し、「ホーっ」と感心することが多くなりました。  

     隣のテントでは、関連学園である「国際言語学院」で学ぶネパールや中国からの留学生をまじえた「アジアクラブ」が、ホットクという韓国風ホットケーキを販売しています。

     昨年はベトナム人留学生に来てもらい、フォーという麺料理にトライしましたが、フォーをゆでるのに大変時間がかかり、エライ目にあいました。 店の雰囲気を明るくするために、留学生を交えた関係者一同で、「フォー!」といくらふざけても、事態は一向に改善されません。ガスの火をうちわで煽いで火力を高めようとする、非科学的な苦肉の策もまったく実りませんでした。

     ところが今年は、事情が一変しました。シナモン風味の黒砂糖とナッツの餡(あん)を生地で包んだホットクは、ホットプレートで簡単に焼けます。その上、お手軽なスナック感覚の食品として珍しがられ、1時間程度で完売しました。まさに、「セル・ライク・ホット・ケークス “sell like hot cakes”(飛ぶように売れる)」という英語表現のとおりでした。

     片づけが始まったテントの中で、こんな会話が聞こえてきました。

     「先生。もう少し多く生地をたくさん作っておけばよかったですね」「そうだったね」「粉とイーストを混ぜてこねてから、発酵するまで2時間かかる点がちょっと誤算でした」「でもね、去年のことを思えば大成功だったよ」「そうですね」

     生徒たちの、充実した時間を過ごしたという、満足感いっぱいの表情が印象的です。

     先生は、遥かユーラシア大陸の地平線の彼方に思いを馳せるかのように、目を細めて言いました。

     「イーストか。まさに『アジアクラブ』の復活だった」。酵母(yeast)と東(East)を掛けたコメントのようです。

     「クラブのバザーに取り組んでいる間は、自分のクラスの生徒は放置して、『ホットク』になったけどね・・・」

  • 2015年06月04日ブログの噺

    「合唱コン練習風景」

     文化祭で1年生は合唱コンクールをすることになっていて、そのための練習が各クラスで行われています。

     「おーい。それじゃ、そろそろはじめるぞ」

     担任の先生が練習開始を告げました。

     課題曲は全部で7曲あって、クラスで希望を出した後、曲が集中しないように調整された上で、あるクラスでは「花は咲く」を歌うことに決まりました。

     「さて、これからどうしたらいいのかなあ」「先ず、指揮者を決めましょう」「そうだね。リーダーが不在じゃだめだからなあ」

     この場合、「指揮者」には2つのタイプがあります。きちんと「合唱団員」全体を掌握し、コーラスの完成を目指してしっかり指導する指揮者。それから、ただ場を盛り上げるだけのお調子者というか、単なるムードメーカーです。

     「ちゃんとクラス全体を引っ張り、指導してくれる人が指揮者になってくれよ」

     担任から投げかけられた言葉が「抑止力」となって、適正な人選が行われました。注意しておかないと、南シナ海の岩礁のように、教室がいつの間にか埋め立てられて、生徒が好き放題にやり始める恐れがあるのです。

     コーラスは3部合唱で、男子のパートと女子がソプラノとアルトの2パートに分かれます。CDの音源に合わせて、先ずそれぞれのパートを覚えることになりました。

     こんな場合、男子と女子では練習の取り組みに差が感じられます。

    「それでは、メロディーをしっかり聞いて、自分のパートを完璧に覚えてね」

     しっかりした女子のリーダーからは、こんなテキパキとした指示が出て、女子生徒はそれに忠実に取り組もうとする一方、男子は悪ふざけのモードからなかなか抜け出せません。症状が進むと、「○×くーん。お薬とお注射の時間ですよ」と、婉曲的に注意しても聞こえない状態に陥り、そんな時、「こらあ!いい加減にしろ!!」と、担任の先生の「カンフル剤」の一喝が飛びます。

     歌声が聞こえてきました。

     「♪花は 花は 花は咲く~ ♪いつか生まれる君に~♪ 花は 花は 花が咲く~♪」

     しばらくすると、やっと練習が軌道に乗ってきて、少しずつ合唱らしくなりました。

     「♪花は 花は 花は咲く~♪いつか生まれる君にぃ~♪ 花は 花は 花が咲くぅ~♪」

     音程も徐々に定まってきました。

     「♪花は 花は 花は咲くぅ~ ♪いつか生まれる君にぃ♪ 花は 花は 花が咲くぅ~♪」

    ・・・ずっと聞いていると、だんだん頭の中に花が咲いてくる気がしました。

     演奏できる楽器がカスタネットと木魚だけだという担任の先生が、こんなアドバイスをしました。

     「歌はだいぶんまとまってきたから、今度は見せることを練習しようか」「どうするんですか」「イントロのメロディーが長いから、その間、全員で瞳を輝かせたらどうだろう。目を見開いてキラキラさせ、合唱に取り組む純粋で誠意に満ちた姿勢を示し、聴衆にアピールするんだよ」・・・生徒から、あまり賛同の反応はありませんでした。

     「まあ、いいか。ただひたすら、合唱が無事に終ることを祈ってガッショウ・・・」

     もごもごと呟いた言葉も黙殺されて、「あとは見守るだけにしよう」と先生は、「巨人の星」の飛馬のお姉さんのように、教室の柱の陰にそっと身を隠しました。

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