造形芸術科の授業紹介⑨
授業名 絵画
実施学年:造形芸術科1年生
担当教員:臼井 英雄
実施時間:1週間に2時間
自然や身近なモチーフを手本に、透明水彩道具を使って絵画の表現方法を学ぶ授業です。「絵画」は、自分の心に芽生えた発見や感動を平面に表現することを目標にしています。その方法は様々ありますが、1年生では小学生の頃から慣れ親しんでいる水彩による表現で、絵画に取り組む姿勢や技術を学んでいきます。
また、絵画表現で重要な役割を担うのが色彩です。知識として色相の性質や組み合わせの効果を理解した上で、独自の絵画空間を手に入れるためのトレーニングを行います。また、水彩画材には、透明水彩と不透明水彩があります。透明水彩は、水で薄く溶いた絵の具を画面上で幾重にも重ねて描く技法で、画用紙の白さを生かしながら描いていきます。彩度の高い色どうしが重なり画面上で変化します。水分を巧みにコントロールすることでにじみやぼかしが偶然発生することもあり、日本画の表現に似ています。不透明水彩は、作りたい色をパレット上で作り、濃淡の調節は白色の絵の具を混ぜて作ります。水分よりも絵の具の量が多く強い色味で描くことができて上から重なる色が主張しますので、油画の表現に似ています。アクリル絵の具も水性ですが、乾くと耐水性となり下地の色を完全に隠してしまうので油画に似ています。
これらの特徴から、高校1年時に習得する技法は透明水彩技法です。
私たちは、自然の中に様々な色を感じることができます。それらはわずかな光の量で変化し、様々な色が互いに共鳴しているのです。それをチューブに入った一色の絵の具では到底表現できません。自然を観察することで色の変化に気づき、混ぜ合わせてできる色を知ることよりも、直感的に感じた色の重なりによって生まれた新しい色の発見を楽しみながら感性豊かに描いて欲しいと思っています。その導入として透明水彩の技法はとても勉強になります。
課題は、卓上のモチーフ(角材と紙コップ)をグリザイユ画法で描く練習を行ったのち、
- 卓上静物着彩(濃紺ペットボトル、赤と白のチェック柄の布、レモン)
- 九州高校内での屋外スケッチ
- 卓上静物着彩(魚介類、石、色紙3枚)
- 自画像(現在制作中)
の4点を制作します。
グリザイユ画法とは、絵画空間を作るためにモノトーンの濃淡だけで陰影や立体感を描く手法で、一般的にグレーで行いますが、私は茶系色も含めています。色を限定することにより、形と光の情報を正確に捉えることに集中できます。また、色彩の役割が、トーンの幅を獲得することで画面に美しさをもたらすことに気づくのです。
一つの課題が完成すると、クラス全員で鑑賞会を行います。それぞれの答えを確認する絶好の機会で、とても大事なことなのです。絵画は主観的な表現を大切にしています。自ら考えて描いた絵画が周りにどう伝わるのか、唯一客観的になれる機会だからです。鑑賞会は、欠点を指摘することが目的ではなく、共感できる美しい表現を見つけることが目的なのです。他の人の良いところを参考に自分の絵画にフィードバックして課題を見出し、次の表現につなげていくことにあります。
課題①では、皆同じモチーフで描いたので、画面構成に変化は少なかったですが、課題②では場所選びの段階から描きたい場所決めに時間がかかっている生徒もいました。しかし、各自で主観的に選んだ場所だけに思い入れが強く、良いスケッチになった生徒が多かったと思います。
課題③は、普段見る機会が少ない海の生物と石は、しっかり観察することで新たな発見や気づかなかった魅力を再認識することができました。
課題④は現在制作中です。入学前の課題と同じ課題ですが、絵画の授業で得た表現に対する意識や技術を総動員して新たな気持ちで制作に励んでいます。その様子を見ていると個々の能力が、大幅に向上しているのがよくわかります。指導者として1年間の成長がとても楽しみです。
- 卓上静物参考作品 ②校内スケッチ参考作品 ③魚介類と石の静物参考作品
